桜の花びら舞う頃に
「玲司……」

「な? 悠希……」






玲司が、悠希の肩に手を置いた瞬間━━━






ポタッ!






水滴が、玲司の手を濡らした。



「ん~?」



空を見上げる玲司。



「うは……真っ暗……」



空は、一面暗雲に覆われていた。



「これは……本降りなるぞ……」






玲司の言葉が終わらないうちに━━━






ポタッ、ポタッ!






大粒の雨が、2人の洋服に染みを作る。


「ねぇ~、雨~!」


拓海も遊びを止め、ヒマワリと共に2人のところにやって来た。


「ああ……これは、ヤバそうだな!」


あわてて視線を巡らせる玲司。


「どこか、避難出来るところ……あっ!」


その時、向日葵畑の隅にある、古びた小屋が目に入った。



雨は、次第に強さを増してくる。

もう、一刻の猶予もない。



「拓海ーっ! あそこに避難するぞ!」



玲司は、小屋を目指して走り出した。







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