桜の花びら舞う頃に
悠希は、玲司と話をしていた場所から動いていなかった。


激しい雨が体を打ち付けるが、今は全く気にならなかった。

むしろ、この冷たさが心地良かった。





雨に打たれる悠希の胸に、由梨がこの世を去る間際の言葉がよみがえる。






『あたし……悠希と出会えて……本当に良かった……』




『だから……ありがとう……本当にありがとう……』






そうだ……




由梨は、笑顔だった……




笑顔で、ありがとうって……






そして……





『拓海を……お願い……』





もう、抱きしめることの出来ない拓海を……




自分の分まで愛してあげて……




そして、幸せにしてあげてと……




その想いを託されたんだ……





「俺は……」





悠希は、天を見上げる。




「もう……大丈夫だ!」




激しく降る雨は、悠希の火照った体と心を冷やしてくれた。







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