桜の花びら舞う頃に
「うう……」



うめき声しか出ない喉。

熱も、次第に上がってきた気もする。

悠希は、手探りで枕元の電子体温計をつかんだ。


「ちょっと……計ってみよう……」


体温計を、脇の下に挟む。




数秒後、



ピピピッ、ピピピッ……



と、測定終了の合図が鳴り響いた。


「熱、どれくらいなんだろ……」


悠希は、デジタルの画面を見る。



「はうっ!?」



そして、愕然とする。


「計らなきゃよかった……」


電子体温計は、39度を示していた。


熱はあるだろうと思っていたが、まさかここまでとは思っていなかった。

体調の悪さを感覚だけではなく、視覚としても確認してしまった今、ますます病状が悪化した気がする。



「病は気からって……本当だな……」



かすれた声で、つぶやく悠希。

当然ながら、誰からの返事もない。



静かなアパート。

聞こえてくるのは、小鳥のさえずる声と蝉の鳴き声。

そして、時折アパートの前を通る車の音くらいだ。

しかし、それも今はとても遠くに感じる。




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