桜の花びら舞う頃に
た~は、今、何してるかな……




悠希は、学校にいるはずの拓海に想いを馳せる。




そういえば……今日はた~の好きな、あのアニメがある日だな……




悠希は、そっとそのアニメの主題歌を口ずさんでみた。



「Kissの……魔法~……」



その瞬間、不意に玲司の言葉が浮かぶ。



『さくらちゃんと……キスしたいとか思わないのか?』


「うわわわわっ!」



悠希は目を見開くと、慌ててその言葉を頭から追い出した。


「そんなこと考えたら……ますます眠れなくなるって!」





━━━違うことを考えなくては!





しかし、考えないようにすればするほど逆に考えてしまうものだと、よく人は言う。

悠希は、またしてもそれに当てはまっていた。


「さくらちゃん……か……」


つぶやく悠希。


「可愛いし……いい子だし……それに……」


タオルケットを、強く抱きしめる。


「それに、由梨に似てるんだよな……」


悠希は、『ふふっ』と、短く笑った。


「前にうちに来た時は、彼氏はいないって言ってたし……」


そして、頭までタオルケットを引き上げと、中に潜り込む。

タオルケットの中は、悠希の体温でかなり暖まっている。

しかし、今はそれが心地良かった。



「う~~~」



何度も寝返りをうって身もだえする悠希。

しかし、それはいつしか規則正しい寝息へと変わっていった……









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