桜の花びら舞う頃に
それから、一時間ほどの時が流れた。



「ん~?」



拓海は、ふと耳をすます。

アパートの駐車場に入ってきた、自動車の音が聞こえる。



「来たかな~?」



再び忍び足を使い玄関に移動すると、扉を開けて来客者を待つ。



「……あっ!」



数秒後、手を振りながら現れたその人に、


「し~っ!」


と、人差し指を口に当て、音を立てないように指示をした。


「パパね~、お休み中なの」


小声で、そう伝える拓海。


「起こしたら可哀想だから、そっと入ってね」


そう言うと、人懐っこい笑顔で相手の手を取り、招き入れるのだった。







< 349 / 550 >

この作品をシェア

pagetop