桜の花びら舞う頃に
「うわぁぁぁっっ!!」
大きな叫び声を上げ、悠希は飛び起きた。
そして、はぁはぁと肩で息をする。
身体は汗でぐっしょり濡れていた。
悠希は恐る恐る顔を上げる。
目の前に広がる風景は……
先ほどの広い草原ではなく、見慣れた自分の部屋だった。
悠希は思わず胸をなで下ろした。
「……夢か」
しかし、念のため自分の体を確かめてみる。
ゴクリと音を立てて唾を飲み込む悠希。
部屋の鏡に写ったその姿は……
「……だ、大丈夫、大人だ……」
ふ~と長い息を吐きながら、悠希はその場に腰をおろした。
「しかし……」
今まで見ていた夢を振り返る悠希。
「……なんてベタな夢を見てるんだ、俺は」
漫画でよくありそうな夢に、悠希は少し恥ずかしくなる。
「た~に、見られてないよな……?」
ソファーで眠る拓海にそっと目を向けるが、幸いなことに拓海はまだ夢の中のようだ。
悠希は少し安心し、時計に目をやった。
時計の針は6時を指すところだった。
「まだ、少し早いけど……思い切って起きるか!」
せっかく目が覚めたのだからということもあるが、二度寝をしてまた変な夢を見るのは
避けたかったという理由もある。
悠希は立ち上がると、汗に濡れた体をシャワーで流すため、風呂場と向かうのだった。