桜の花びら舞う頃に
(何か話題……何か話題を……)



焦りながらも、悠希はあれこれと思考を巡らせる。

しかし、動揺する心では、ろくな話題が見つからなかった。



悠希は、チラリとさくらの顔を見る。

その瞬間、不意にあの言葉がよみがえってきた。





『さくらちゃんと……キスしたいと思わないのか?』





ボッと、顔に火が着いたように熱くなる。


再びうつむく悠希。

悠希の心臓は、激しく脈打っている。



「ねぇ……」



そのとき、さくらが口を開いた。



「な……何?」



自分の考えを見透かされたのかと思い、悠希の心臓は一際激しく脈打つ。


「ちょっと……空気を入れ替えようか」


しかし、さくらの言葉は、悠希が考えていたこととは違っていた。

思わず、安堵のため息が口から漏れる。



さくらは、すっと椅子から立ち上がった。


「窓開けるね」


「うん━━━」


顔を上げた悠希。

その瞳に、さくらの唇が映り込む。




(……柔らかそうな唇だな)




思わず、そんなことを考えてしまう悠希だった。





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