桜の花びら舞う頃に
「あ……そうそう、悠希くん」



窓を開けたさくらは、その場で悠希に向き直る。



「ねぇ、気付いてくれた?」

「うん……」



さくらは、髪に指を入れる。



「少しだけだけど、自分で髪切ってみたの」

「うん……」



確かに、さくらの髪は以前より短くなった気がする。


だがそれは、言われなくてはわからない程度のものだ。

伸びた髪の、バランスを整えたといったところだろう。



「時々、自分でやるのよ」

「うん……」



しかし悠希の意識は、今は別のところにあった。


さくらが話すと、その唇がなめらかに動く。


「ねぇ、上手く出来てる?」



(あのリップの色……さくらちゃんに似合ってるな……)




悠希の意識は、さくらの唇にますます集中する。




(艶やかな唇……グロスを塗ってるのかな……)




「……ねぇ、悠希くん気付いてくれたの?」




(やっぱり……毎日、手入れしてるのかな……?)




「悠希くん……?」




(さくらちゃんとキスしたら……)





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