桜の花びら舞う頃に
(月島くんのこの書類……本当は、今日渡さなくてもいいようなものだけど……)




じっと、悠希を見つめる。




(月島くんにアピールするには……絶好のチャンスだもんね……)




自分を見つめる視線に、思わず笑顔が引きつる悠希。




(今日の香澄さん……なんだかいつもと違うな……)




「じゃ……じゃあ!」


隅に追いやられた気がしたさくらは、ずいっと身体を前に出した。



「香澄さんはともかく……何でエリカが知ってるの?」


「それは……私のミス……」



香澄は、がっくり肩を落とす。


「月島くんに、何か作ってあげようとスーパーに寄ったら……」

「偶然にも駐車場で会ったのよね!」

「そこで……ついポロッと……」


そう言って、ため息をつく。


「ああ……なるほど……」


悠希とさくらからも、ため息が漏れた。



「アタシが香澄と会わなかったら、今日のことは知らなかったかもしれないし……」



少し考え込むような、真面目な表情を見せるエリカ。



その後、


「これって、運命感じない?」


と、いつもの笑顔を見せた。



「「感じません!」」



寝室に、女性2人の激しい声が響き渡るのだった。











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