桜の花びら舞う頃に
「このお菓子、おいしーい!」



拓海は、香澄とエリカがスーパーで買って来たお菓子を、夢中になって食べている。


「アタシが選んだゾ!」


エリカは、鼻をこする。


「おにぎりとかも買ってきたからね。た~ちゃん、食べる?」


しかし、香澄のその問いに、拓海は首を横に振る。


「それは入らなーい」

「あたしが来た時に、お弁当食べさせちゃったから」

「うん! 僕、残さないで全部食べたんだよ!」


さくらと微笑み合う拓海。

その様子に、香澄は少し残念そうな表情を浮かべた。


しかし、すぐに笑顔を作ると、悠希に向き直る。


「月島くんは、食べられる?」


そう言ってスーパーの袋を広げる。

中には、おにぎりや菓子類の他に、様々な食材や飲み物が入っている。



「じゃあ……コレで……」



かすれる声で、遠慮がちに手を伸ばす悠希。

中から、スポーツドリンクを取り出した。


「それ? それだけでいいの?」

「とりあえず、今は……」


心配する香澄に、悠希は弱々しい笑顔で答える。


「お腹は、すいてないの?」

「多少減ってるけど……おにぎりはちょっと……」


2人の会話を聞きながら、エリカは香澄から袋を受け取った。

そして、さくらの方を向く。


「せっかくだから、アンタも何か飲み物取ったら?」




(へ~、珍しい……)




素直に感心するさくらに、エリカはずいっと袋を押し付けた。


「飲み物取ったら、悠希が食べられそうなモノ作ってやって」




(そーいうことかい!)




「アタシは、悠希の看病してるからさ~!」

袋を抱きかかえ、呆気に取られるさくら。

悠希に向き直るエリカ。


「ごめんなさいね。私が、エリカが無茶しないように、目を光らせておくから」


香澄はそう言ってさくらの肩を叩くが、そんな言葉で気が晴れるワケがなかった。








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