桜の花びら舞う頃に
「ねぇ、悠希!」


悠希の気も知らず、エリカは明るい。



「このアルバムさ、奥さんの写真が一枚もないみたいだけど……?」


「ああ……」



悠希は、目を細める。



「た~がさ……あまりに寂しがるもんだから……全部、由梨の実家に置いてきたんだ」



そう答える悠希だったが、それは表向きの理由だった。


本当の理由は、悠希が辛かったからに他ならない。

当時は、由梨のことを考えるだけで、胸をナイフで刺されたかのような痛みが走っていた。




しかし……




それも今は、少しずつ和らいで来ている。




(さくらちゃんと、出逢えたから……)




遠い目をする悠希。






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