桜の花びら舞う頃に
「ふ~っ、ふ~っ!」



エリカはスプーンにすくった雑炊に息をかける。

そして、一口食べた。


「うん、これなら大丈夫! はい、ア~ン」


悠希の口に雑炊を運ぶエリカ。

口の中に、柔らかな味が広がる。

さくらの温かな想いが伝わってくる。

これは、そういう料理だった。



「美味い!」



その素直な言葉に、さくらの顔に少しだけ笑みが戻る。


「はい、悠希! いっぱい食べてね」


雑炊をすくうエリカ。

毎回一口食べて、程よく冷めていることを確認し、悠希の口に運ぶ。




(気に入ってもらえて良かった!)




笑顔を浮かべながら、さくらはペットボトルのお茶を口に含む。

悠希の口にスプーンを運ぶエリカの顔も、何故かいつもより機嫌がいい。



「……ねえ」



悠希がそのことを疑問に思っていると、エリカが不意に口を開いた。



「ん?」


「アタシたち……さ」


「うん」


「……間接キスしてるよね!」


「!?」





ブーッ!!





悠希は、口に含んでいた雑炊を。

さくらは、含んでいたお茶を、思わず吐き出してしまう。

気管に入り、激しく蒸せる悠希とさくら。


「きゃーっ!?」


笑いながら悲鳴を上げるエリカ。


「あ……あなたは、何を言ってるのよ!」


さくらと香澄は、顔を真っ赤にしながら、エリカから雑炊を奪い取ろうとする。


「ちょっと! それ、渡しなさいってば!」


寝室の喧騒に、そっと戦略的撤退を決め込む拓海だった……









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