桜の花びら舞う頃に
時は流れて……






「あ……もうこんな時間……」



さくらは、ふと腕時計に目を向ける。

時計の針は、16時を指すところだった。



「あたし……そろそろ帰るね」


「えっ!?」



悠希は、驚き顔を上げる。


「そうね……私も、そろそろ仕事に戻らないといけないし……」


香澄もそう言って、チラリと悠希を見た。


「あ、帰るの? バイバーイ」


エリカは笑顔で、2人に手を振る。


「何言ってるの、みんなで帰るのよ」


ため息をつく香澄。


「私たちがいたら、月島くんがゆっくり出来ないでしょう?」

「え~、アタシはもっといるー!」

「じゃあ、月島くん。お大事にね」


駄々をこねるエリカの腕を取って、香澄は歩き出す。


「それじゃ……ね」


さくらも、続いて腰を浮かす。


「お鍋の中、まだ雑炊残ってるから、良かったら夕飯に食べてね」

「さくらちゃん……」

「食べさせてくれる人はいないけどね!」


激しく言い放ち、寝室を後にするさくら。



「さくらちゃ~ん……」



後ろから自分を呼ぶ弱々しい声が聞こえてきたが、それはあえて無視して玄関へと向かった。








< 370 / 550 >

この作品をシェア

pagetop