桜の花びら舞う頃に
「じゃあ、またねー!」



駐車場で、3人を見送る拓海。


「うん、またね、た~ちゃん」

「アタシは、もう少しいたかったな~」


思い思いのことを口にしながら、それぞれの車に乗り込む。


「それじゃね、た~君」

「うん、さくら先生も、ありがとー!」


手を振りながら、さくらも車に乗り込む。



「ふぅ……」



シートに座ると、気持ちが落ち着いたのか、不意に自己嫌悪の念が浮かび上がってきた。




(今回のこと……あたしが鍵かけ忘れなかったら、こんなことにはならなかったかもしれないのに……)




さくらは、ため息をつく。




(悠希くん……具合悪いのに、あたしはあんなこと言って……)




『食べさせてくれる人はいないけどね!』




(あ~、もう最悪!)




思わず、頭を左右に激しく振るさくら。




(今度会ったら……ちゃんと謝ろう……)




そう心に誓いながら、手にしていたハンドバッグを助手席に……



「……って、あれ?」



しかし、さくらの手には、何も握られていない。



「……あっ!」



さくらは、あわてて車から飛び降りる。


「どうしたの~?」

「先生、忘れ物しちゃったみたい」


そう言うと、さくらはアパートに向かって駆け出すのだった。









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