桜の花びら舞う頃に
「ねぇ……」



さくらは、ためらいがちに声をかける。



「あたしもね……風邪の民間療法というか……おまじないみたいなの……1つだけ知ってるんだけど……」


「え゛……?」



一瞬、先ほどのエリカと香澄の騒動が蘇る悠希。


「ど……どんなの?」


ゴクリと唾を飲み込む。


「うん……じゃあ、目をつぶって……」




(い、痛いことしないでくれよ~!)




そう思いながら、悠希はキュッと強く瞳をとじた。




「悠希くん……」




さくらは短く名前を呼ぶ。






そして……






(えっ……!?)






不意に、悠希の唇に何かが触れる。





温かく……





柔らかいその感触……





それが、さくらの唇だとわかるまでに……





さほど時間はかからなかった……







唇と唇を合わせる2人。





そして、ゆっくりと離れていく。





それは時にして、ほんの数秒の出来事だったかもしれない。





しかし、悠希には永遠ともいえるくらい、長い時に感じられた……





「さくら……ちゃん?」


「ねぇ……知ってる?」





唇を押さえ、さくらは伏し目がちに悠希を見る。







「風邪は……人にうつすと良くなるんだって……」









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