桜の花びら舞う頃に
「ほらっ、拓海」


玲司は、さくらと香澄のケーキを拓海に渡す。

一度に2つのケーキを目の前にした拓海は、今までにないくらいニコニコしている。


「いっぱい食えよ~」


玲司は笑いながら、次々と皆にケーキを手渡していく。


「じゃ、次は悠希な」


玲司が、ケーキを取ろうとした瞬間……


「あ、悠希のはアタシがやるー!」


エリカが、勢い良く手をあげた。


「別に、ケーキくらい誰が渡しても……」

「いいの!」


そう言って玲司から皿を奪い取る。

エリカは、香澄のケーキをそっとすくい上げると、皿の上に乗せた。


「はい、どうぞ」

「お……おい、さくらちゃんの方は?」


さくらのケーキを渡す素振りを見せないエリカに、玲司は慌てて尋ねる。


「だって、そんなに食べたら悠希が太っちゃうじゃん」


平然と答えるエリカ。




(うわぁ……さくらのケーキは手作りだから、牽制してるのね)




麻紀は首をすくめる。




(さくら、大丈夫かな……?)




そっと、顔をのぞく。





そこには……





案の定、唇を噛み締めているさくらがいた。







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