桜の花びら舞う頃に
それから、1時間ほど過ぎて……






「━━━それでは、よろしく頼むよ」


「はい、ありがとうございます!」



ようやく、会合は終わりに向かおうとしていた。




(やっとだ~)




エリカは、ホッと一息つく。

ようやく、兄の呪縛から逃れられる。

背中に翼があったなら、どこまでも飛んでいける。

エリカは、そんな気持ちでいっぱいだった。




(この後どうしようかな……)




様々な思いを巡らせているエリカに、津上は向き直る。



「それではエリカさん、行きましょうか」



愛嬌のある笑顔を見せ、立ち上がる津上。

しかし、ほとんど上の空だったエリカは何のことかわからない。



「はぁ……」



差し出された手に、思わず気の抜けた返事を返してしまう。


「エリカさん?」

「……済まない、津上くん。ちょっと待っていてくれないか?」


言うが早いか、龍一は席を立つ。



「……エリカ、来い」



エリカの脇を通り抜ける瞬間、静かな声を放つ龍一。

決して、エリカの方を振り向かずに。



「……っ!」



心臓を鷲掴みにされたような感覚。

エリカは、青ざめながら立ち上がる。

そして、龍一の後を追いかけるのだった。








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