桜の花びら舞う頃に
それからほどなくして、食事会は終わりを迎えた。
「それでは、また」
1階のロビーで2人に挨拶をすると、津上は外で待たせているタクシーへと歩き出した。
(アタシは……どうすればいいんだろ……)
その背中を見つめるエリカに、龍一はそっと近付く。
「……結納は来月に行うぞ」
「えっ!?」
その言葉に、エリカは驚き振り返る。
「何だ、その顔は? 不服なのか?」
「だって、そんな急に……」
「こちらにも、何かと都合があるのだ」
そう言って笑う龍一。
しかし、その目は笑ってはいない。
「そんな! アタシにだって都合がある!」
「お前の都合など問題ではない。……それに、身辺整理なら、ひと月もあれば十分だろう」
そう言って、龍一はジロリとエリカを見る。
エリカの全身から、冷たい汗が吹き出した。
蛇ににらまれた蛙とは、まさにこのことを言うのだろう。
「で、でもアタシ……津上さんのこと、まだよく知らないし……」
「そんなもの、これから知っていけば良い」
もはや、エリカには言い返す気力は残されていなかった。
龍一が考えを改めることなど、そうあるものではない。
エリカは、ただただ唇を噛み締め、うつむくしかなかった。
「それでは、また」
1階のロビーで2人に挨拶をすると、津上は外で待たせているタクシーへと歩き出した。
(アタシは……どうすればいいんだろ……)
その背中を見つめるエリカに、龍一はそっと近付く。
「……結納は来月に行うぞ」
「えっ!?」
その言葉に、エリカは驚き振り返る。
「何だ、その顔は? 不服なのか?」
「だって、そんな急に……」
「こちらにも、何かと都合があるのだ」
そう言って笑う龍一。
しかし、その目は笑ってはいない。
「そんな! アタシにだって都合がある!」
「お前の都合など問題ではない。……それに、身辺整理なら、ひと月もあれば十分だろう」
そう言って、龍一はジロリとエリカを見る。
エリカの全身から、冷たい汗が吹き出した。
蛇ににらまれた蛙とは、まさにこのことを言うのだろう。
「で、でもアタシ……津上さんのこと、まだよく知らないし……」
「そんなもの、これから知っていけば良い」
もはや、エリカには言い返す気力は残されていなかった。
龍一が考えを改めることなど、そうあるものではない。
エリカは、ただただ唇を噛み締め、うつむくしかなかった。