桜の花びら舞う頃に
その夜……




自室で、1人たたずむエリカ。



与えられた自由。


与えられた幸せ。



それらに一体、何の意味があるのだろう?



そう感じてしまった今、目に入るもの全てがモノクロに見える。



エリカは、救いを求めるかのように、視線を巡らせた。


部屋、テレビ、街並み……


しかし、そのどれもがモノクロの世界だ。




だが……




「あっ!」




エリカの眼飛び込んできた、鮮やかな色彩を放つもの。


エリカは、あわててそれに駆け寄った。

そっと手を伸ばし、震える指でつかみ上げる。





それは、梅雨の時期に悠希たちと撮った写真だった。





エリカは、写真立てごと胸に抱きしめる。

そして、そっと瞳をとじた。


胸の奥に、温かいものが広がっていく。






勘違いから始まった恋かもしれないけど……


それでも、アタシは本気なんだ!






「よしっ!」



エリカは、気合いと共に眼を開く。


「こんなウジウジしてるなんて、アタシらしくないよ!」


エリカは、手を握りしめる。



「待っててね、悠希!」



その眼に映る世界は、もうモノクロではなかった。











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