桜の花びら舞う頃に
「あ、いたー!」



車から降りたエリカは、悠希の車を見つけて走り出す。


いつものタイトなワンピース。

その姿を見た悠希も、ゆっくりと車から降りた。


「ゆ~う~き~!」

「や、やあ、エリカ……」


胸に飛び込んで来そうなその勢いに、悠希は思わず身構える。


「やだな~、そんなに警戒しないでよ~」


そう言って笑うエリカは、いつもと何ら変わりなく見えた。




(俺の思い過ごしか……?)




そう思う悠希だったが、やはり電話でのあの様子は気になる。



「さっきの電話だけど……」


「ねぇ、駅前に美味しいケーキ屋が出来たんだよ!」


「いや……じゃなくて……」


「あ、このワンピース、どこのブランドだと思う?」



目を合わさず一方的に話すエリカに、悠希は少し苛立ちを覚えた。



「そうそう、あのね……」


「いい加減にしろっ!」



思わず、大きな声が出る。


「何か、言いたいことがあったんじゃないのか?」


真っ直ぐ見つめてくる悠希に、いつしかエリカの顔も真剣になる。


「う、うん……」


エリカは、胸に手を当てた。

心臓の鼓動が早くなるのが感じられる。






でも━━━


アタシは逃げちゃいけない……


逃げるなんて、アタシらしくない!



そうよ!


悠希は照れ屋だから


きっと、アタシからのアタックを待ってるのよ!






持ち前の前向きな考え方で笑顔を作ったエリカは、顔を上げ悠希に一歩近づく。






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