桜の花びら舞う頃に
「ねぇ、さくら……」



麻紀は、空になったグラスを指ではじきながら、さくらをにらむように見る。


「今夜は、飲み過ぎないでよ~」


さくらは、飲み過ぎると麻紀に甘える傾向がある。

まだ、さほど飲んでいないうちに釘をさしておこうと、麻紀は考えたのだ。

そんな麻紀に、さくらはニコッと微笑む。



「大丈夫よ、麻紀ちゃん!」


「……ホントに?」


「うん! だって、明日は土曜日! 仕事休みだもん!」


「え……!?」



しかし、麻紀の思いは伝わっていない。



「ちょ……さくら、違っ……」

「大丈夫、大丈夫! ほらっ、飲もう!」



あわてる麻紀を制して、さくらは店員を呼ぶ。


「えっと、カシスオレンジと……麻紀ちゃんは、ソルティドッグでいいの?」

「いい……もう、何でもいい……」


飲む前に注意しておかなかった自分を恨む麻紀であった……








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