桜の花びら舞う頃に
楽しい会話と美味い料理。


それに引っ張られるように、飲むペースも早くなる。


1時間も過ぎた頃には、2人ともいい感じで酔いが回っていた。



「ここの店長、結構かっこいいでしょ?」



ふと、麻紀はカウンターの向こうでシェイカーを振る二本木に目を向ける。



「店長目当てに、店に来る女の子も多いんだって。玲司が言ってた」


「そうなんだ……」



さくらも、視線を向ける。



長い髪を後ろで縛り、真剣にシェイカーを振る彼は、確かに端正な顔立ちをしていた。

それに加えて、あのパフォーマンス。

女性に人気があるのも、うなずける。






……でも


あたしは、悠希くんの方がいいなぁ……






さくらは、そう思いながら麻紀に視線を戻す。



「……ねぇ、麻紀ちゃん」


「ん?」


「店長が女の子に人気あるの知ってて、玲司くん、よくフレアに行くの反対しなかったね」



まじまじと、麻紀の顔を見つめるさくら。


「心配じゃ……ないのかな?」


そう言うさくらに、麻紀は軽く笑ってみせた。



「私は、それだけ信用あるってことよ……それより」


「ん~?」


「あんたが私を、恋する乙女のような目で見つめている方が心配だわ……」


「えへへ~、そ~お?」



顔を染めて、にへ~と笑うさくら。

麻紀は、ガックリうなだれる。




(やっぱり……予想通りの酔い方だ……)




高校の時からずっと一緒にいれば、親友のパターンくらいは嫌でもわかる。

しかし、それを阻止するすべは、まだ持ち合わせていなかった。







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