桜の花びら舞う頃に
「……ね、ねぇ!」


「ん~?」


「そんなことより、さくらは悠希くんと、どうなってるの?」



麻紀は話題を変えるべく、悠希を持ち出す。


「悠希……くん……?」


つぶやくように、名前を口にしたさくら。

その表情が、みるみる緩んでいく。

先ほどの麻紀を見つめていた表情より、さくらは、にへ~と微笑んでいる。




(ふ~、話題変え成功……)




麻紀は、ホッと胸をなでおろした。


「上手くいってるみたいだね」

「うん! 明日、会うんだ」

「た~君も?」

「もちろん、3人よ!」


悠希のことを話すさくらの目は、キラキラと輝いている。

一昔前のさくらからは、とても考えられないことだ。




涼介という、過去の恋愛を引きずっていたさくらには……



「あのね麻紀ちゃん! 悠希くんたらね……」



嬉しそうに悠希のことを話すさくらに、麻紀も嬉しい気持ちになる。

思わず『ふふふ』と、笑いが込み上げてきた。


「……どうしたの、麻紀ちゃん? そんなニコニコして?」


そんな麻紀を、さくらは不思議そうに見つめる。


「あはは、別に~」


少し、おどけてみせる麻紀。


「もうっ、何よぅ!」


すねたように、さくらは頬を膨らませた。

しかし、すぐにその表情は笑顔に変わる。


「あははははははっ!!」


2人は、声を揃えて笑った。



その楽しげな笑い声も、金曜の夜という店内の喧騒の中に溶けていく。


来た時はいくつかあった空席も、気が付けば全て埋まっていた。









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