桜の花びら舞う頃に

当時のさくらが好きだった、1つ歳上の瀧川 涼介。


涼介とは家が近いこともあり、幼いころから常に一緒にいた。



幼いさくらが抱いた『好き』という想い。


それは、成長と共に『恋』へと変わっていく。




2人で歩いた通学路。


弁当を作って行った大きな公園。


そして、何度も入った涼介の部屋。




その全てが、さくらにとって大切な出来事であり、かけがえのない思い出だった。



当然、涼介もそう思ってくれているものだと、さくらは信じて疑わなかった。






しかし……






それは、あえなく裏切られる。






大学に進学した涼介が借りたアパート。


そこを訪れたさくらは、1人の女性と遭遇する。


彼女は、涼介のベッドに裸でいた。





涼介を問い詰めるさくら。


涼介は必死に弁解し、謝罪してくる。


そういう行動、そういう言葉が出るものだと、さくらは思っていた。






しかし……






涼介から出た言葉は、さくらの心をたやすく裏切った。




「俺……お前に付き合おうって言ったっけ……?」




確かに、『好き』や『付き合おう』という言葉はなかった。




━━━でも、それは口にしなくても、お互い心で通じあえているから……




さくらは、そう思っていた。



だが、涼介はそうではなかったのだ……










恋に敗れ、傷ついたさくらは、恋から遠ざかっていく。


麻紀の目からは、意識的に避けてきたようにも見える。



悠希と出逢うまでは……









< 427 / 550 >

この作品をシェア

pagetop