桜の花びら舞う頃に
当時のさくらが好きだった、1つ歳上の瀧川 涼介。
涼介とは家が近いこともあり、幼いころから常に一緒にいた。
幼いさくらが抱いた『好き』という想い。
それは、成長と共に『恋』へと変わっていく。
2人で歩いた通学路。
弁当を作って行った大きな公園。
そして、何度も入った涼介の部屋。
その全てが、さくらにとって大切な出来事であり、かけがえのない思い出だった。
当然、涼介もそう思ってくれているものだと、さくらは信じて疑わなかった。
しかし……
それは、あえなく裏切られる。
大学に進学した涼介が借りたアパート。
そこを訪れたさくらは、1人の女性と遭遇する。
彼女は、涼介のベッドに裸でいた。
涼介を問い詰めるさくら。
涼介は必死に弁解し、謝罪してくる。
そういう行動、そういう言葉が出るものだと、さくらは思っていた。
しかし……
涼介から出た言葉は、さくらの心をたやすく裏切った。
「俺……お前に付き合おうって言ったっけ……?」
確かに、『好き』や『付き合おう』という言葉はなかった。
━━━でも、それは口にしなくても、お互い心で通じあえているから……
さくらは、そう思っていた。
だが、涼介はそうではなかったのだ……
恋に敗れ、傷ついたさくらは、恋から遠ざかっていく。
麻紀の目からは、意識的に避けてきたようにも見える。
悠希と出逢うまでは……