桜の花びら舞う頃に
フレアで麻紀と別れたさくらは、タクシーで帰路についた。


アパートの部屋の鍵を開け、ふらつく足取りで中に入る。



「明日……悠希くんに会うから、はっきり聞いてみよう……」



さくらはつぶやくと、洗面所で顔を洗う。

冷たい水が、火照った顔を冷やしてくれる。



「悠希くんは……大丈夫だよね!」



少しだけ、気持ちが楽になった気がした。





~~~♪





その時、カバンの中の携帯電話が着信を告げる。



「も、もしかして……悠希くん?」



さくらはあわてて携帯電話を取り出すと、相手も確かめずに電話に出た。



「はいっ、もしもし!」


『もしもし、さくら?』



しかし、聞こえてきたのは女性の声。



「なんだ……お母さんか……」


『なんだとは、とんだご挨拶ね』



そう言って電話の向こう側で笑うのは、さくらの母、つばきだ。


「あ……ごめんなさい。でも、急にどうしたん?」

『うん、あなたにいい話があるんよ』

「いい話?」


さくらは、話しながらキッチンに移動する。

携帯電話を片手にやかんを掴むと、置いてあるコップに中身を注いだ。




トクトクトク……




中から流れ出す麦茶は、軽快な音を立てて、コップに満たされていく。


出かける前にお湯を沸かし、麦茶パックを入れておいたのだ。


さくらは、アルコールを飲んだ後は、麦茶で喉を潤すのが好きだった。






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