桜の花びら舞う頃に
第8話『星空のディスタンス』
「それじゃ、た~のこと、よろしくお願いします」
「だいじょーぶだよ、心配しないで」
星が輝く夜空に、拓海の笑い声が通る。
「お前が言うなって……」
思わず、悠希はため息をついた。
今日は金曜日の夜。
星がまぶしい午後8時。
この前、祖母のすみれと約束した拓海は、ウキウキ気分で小さなリュックサックを背負
って泊まりにきたのだ。
「悠ちゃん、今度は一緒に飲もうな」
「はい、お義父さん」
人懐っこい笑顔を見せる由梨の父、拓海の祖父の大輔(だいすけ)。
拓海の笑顔は、この祖父の血を受け継いだというのがよくわかる。
「悠ちゃん、今夜は久しぶりに羽を伸ばしておいで」
すみれはそう言うと、悠希に目配せする。
「はい……って、え?」
思わず返事をした悠希だったが、すみれの態度にキョトンとした表情を見せる。
「それって、どういう……」
「じゃーね、パパ! さびしくても泣いちゃダメだよ~?」
「お前な……」
割って入る拓海。
呆れ顔の悠希。
その2人の様子に、祖父母はただ笑うのだった。