桜の花びら舞う頃に
澄み渡る、秋晴れの空。


まぶしい太陽は、優しく世界を照らし出す。



そこに浮かぶ雲は━━━




「焼きたてのパンみたーい!」




車内に、元気な拓海の声が響く。



「た~は、食いしん坊だなぁ」



そう言って、笑うのは悠希。



「だって、そう見えるんだも~ん! ねぇ、先生!」



拓海は、笑顔をさくらに向けた。



「う、うん……そうね」



少々、惚けていたさくらは、あわてて笑顔を作る。


「どうしたの、さくらちゃん。具合でも悪い?」


そんなさくらを、心配そうに見つめる悠希。


「う、ううん、何でもない! 大丈夫よ!」

「そう? そっか」


笑顔を返すさくらに、悠希も笑顔になる。


「あ! パパ、信号青だよ」

「おっ! ありがとう、た~」


車は、再び走り出した。








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