桜の花びら舞う頃に
落ち葉が敷き詰める遊歩道。


そこを悠希とさくらは歩いていた。


落ち葉を踏む度に、乾いた音が鳴る。

それは、普段の舗装された道の感覚とは違う。


ただ歩くということが、とても新鮮に感じられた。




柔らかな風が吹く。


遊歩道を進むうちに、さくらの心は次第に落ち着きを取り戻してきた。






今なら言えるかも……






さくらは、悠希を見た。


その瞬間、さくらを見た悠希と視線がぶつかる。



見つめ合う2人。



「あの……」



先に口を開いたのは悠希だった。



「な、なに?」


「いや……いつも、ありがとうって思って」



悠希は、少し恥ずかしそうに頬をかいた。

その様子に、さくらの顔にも笑みが浮かぶ。


「何それ~?」

「いや、本当だって! た~の誕生日の時も、俺が風邪引いた時も……いや、その前からずっと……」


2人の間を、穏やかな空気が満ちていく。






今なら言える!






さくらは、足を止めた。



「……さくらちゃん?」


「ねぇ、悠希くん!」



振り返った悠希を、さくらは真っ正面から見つめる。



「悠希くんは……あたしのこと……どう思ってる?」



一陣の風が、二人の間を吹き抜けた。


風は落ち葉を巻き上げ、クルクルと宙を舞わせる。






言えた!



遂に言えた!!






足元にまとわりつく落ち葉すら、今は気にならない。

いや、気にしている余裕はないという方が、正しいかもしれない。


さくらの心臓は、雷のように鳴り響く。


その視線は、悠希の唇に集中する。






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