桜の花びら舞う頃に
「さくらちゃんのこと……?」


「うん……」



さくらは、握り拳をギュっと胸に押し付けた。



悠希の口が、ゆっくり開く。



「凄く……感謝してる」



しかし、さくらが望んでいた答えは返ってこなかった。


「そうじゃなくて!」


さくらは、両手を振り下ろしながら抗議する。


「え……? あ、ああ……うん、さくらちゃんは、いつも頑張ってて……」

「そうじゃないってば! 女性として、どう思ってるか聞きたいの!」






━━━好き






その一言が、さくらは聞きたかった。



潤んだ瞳で見つめるさくらに、悠希は唾をゴクリと飲み込む。


「女性……として……?」

「うん……どう思ってる?」

「それは……」


悠希は、さくらに向き直った。




「とても……大切な人……だよ」






そう……


かけがえのない……


大切な人……






悠希の胸に熱いものが込み上げる。




「そっか……」




さくらはそうつぶやくと、クルリと悠希に背を向けた。

その肩は、小刻みに震えているように見える。



「……さくらちゃん?」



悠希は、その背中ごしに声をかけた。


さくらは前を向いたまま、ゆっくり首だけを回す。

そして、肩口に悠希を見た。


その表情に、言葉を失う悠希。


瞳には、溢れんばかりの涙が浮かんでいたのだ。



「さくらちゃん……」






(悠希くんも……好きって言ってくれないんだね……)






さくらは心の中でつぶやくと、再び前を向く。



「あたしね……お見合い……するんだ」


「……え?」



クルリと振り返るさくら。

その表情は、悲しげに微笑んでいた。

瞳いっぱいに、涙を浮かべたまま……



「あたし……今日はもう、帰るね……」



さくらはそう言うと、再び背を向けて歩き出した。

悠希は、その背中を見つめることしか出来なかった……












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