桜の花びら舞う頃に
日曜日に迎えに来ると告げ、拓海を預けた悠希。

一人、車に戻る。


「今夜から一人か~」


久々の一人の夜。

何年ぶりだろう?

もはや、それすら覚えていない。

とにかく、久しぶりなことは間違いなかった。


「さて……どうしたものか……?」


悠希は前髪をかきあげた。

一人の夜に慣れていない悠希は、少々持て余しぎみな感がある。


「とりあえず、酒でも買うか……」


つぶやきながら車のエンジンをかけようと、キーに手を伸ばした……


その時━━━


悠希の携帯電話がメロディを奏でる。

今、流行りのロックバンドの歌をダウンロードした携帯電話は、夜空に広がる星に届けと言わんばかりに賑やかに歌う。


「この歌は……友達からだ」


悠希は、携帯電話を内胸のポケットから取り出した。

サブディスプレイで名前を確認した後、通話ボタンを押して電話に出る。



『はろ~!』



電話からは無駄に明るい声が聞こえてきた……


「なんだよ玲司、そのテンションは……」

『俺らしいだろ?』

「……まぁな」


苦笑する悠希。



電話の主は三上 玲司(みかみ れいじ)。

悠希とは高校の時からの付き合いだ。

昔は何をするのも一緒だった。

由梨と結婚した時も、拓海ができた時も、一番喜び祝ってくれたのは玲司かもしれない。

親友とはこのことを言うのだろう。



……ただ彼には、少々調子に乗りすぎるという欠点もあるのだが。


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