桜の花びら舞う頃に
悠希くんも、涼ちゃんと同じ━━━




悲しみに沈むさくらは、1人歩いていた。

涙が1つ、2つとこぼれてきて、さくらはギュッと瞳を押さえる。


「今日は……もう帰ろう……」


大通りに出れば、タクシーが通っている。

それを捕まえて、アパートまで帰ろう……


そう思うさくら。






━━━その時。






「帰るの?」



不意に、背後から声をかけられた。

さくらは、驚き振り返る。

そこには香澄が立っていた。

あわてて、涙を拭くさくら。


「帰るんだ?」


香澄は、再びそう問いかける。


「は……はい」


平静を装って答えるさくら。


「今日は……もう……帰ります……」

「ふ~ん……」


香澄は、値踏みするようにさくらを見た。


「な……何ですか?」

「あなた……月島くんが絡むと、最近変よね」

「えっ!?」

「この前の、た~ちゃんの誕生日ケーキの時もそう。エリカと張り合ってたじゃない?」

「そ……それは……」


さくらの心臓の鼓動が早くなる。



「あなた、やっぱり……」



香澄は、瞳を反らさずに言う。



「月島くんのことが、好きなんでしょ?」


「!!」



心臓を鷲掴みにされたかのような感覚。

さくらは胸に手を当て、唇を噛み締めながらうつむいた。


「その様子だと……やっぱりそうなのね……」


そのさくらの様子に、香澄は困ったようにうなずいた。


「教師がさ……保護者に恋してるなんて周りにバレたら……どうなるかしらね?」


さくらは、ハッとして顔を上げる。

そして、自分を見つめる香澄の視線に、思わず身体を震わせた。


「言うんですか……」


普通に声を出したつもりだが、さくらの喉からはうめくような声しか出ない。



「……さあね」







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