桜の花びら舞う頃に
『悠希、今夜暇だろ?』
「まぁ……ね……」
そう答え、ハッとする悠希。
「お前、何でそれを……?」
『ん? 昼間、由梨ちゃんのお母さんに偶然会って聞いたんだけど?』
「……だからか」
先ほどの目配せの意味を理解した悠希。
『悠ちゃん、今夜は暇だから遊んであげてって、お願いされちゃったよ』
笑いながら言う玲司。
「……お義母さん」
思わずため息が漏れる。
すみれの気遣いに、色々な意味で涙が出そうになった。
『じゃあ、今からウチ来いよ』
玲司は半ば強引な誘いだったが、断る理由もなかった悠希は了解したことを告げる。
電話を切るとエンジンをかけ、玲司のアパートへと車を走らせた。
予想外の友の誘い。
だが、おかげで今夜は退屈しないですみそうだ。
春の星座が見守る中、白のステーションワゴンは快調に国道を走り抜けていくのだった。