桜の花びら舞う頃に
さくらがこの街に初めて来たのは、高校２年の春休みのとき。


そのときは、レストラン・ケレスでの短期間アルバイトのためだった。


涼介と別れ、自分の進むべき道すら見失っていたさくらは、そこで１人の女性と出会った。




その女性は……




「猫さん……」




動物の着ぐるみの仕事をしていた２人は、それぞれが着用していた動物の着ぐるみの名前で呼び合っていた。



「猫さんのおかげで……小さい頃の夢だった教師という道を……あたしは思い出せた」



もう一度、猫さんに会ってお礼が言いたくて、大学もこちらの学校を選択した。





しかし……





いまだに猫さんと会うことは叶わない。

もはや顔しか覚えていない今、探し出すことは絶望に近いものがあった。



「こんなことなら……連絡先聞いておくんだったな……」



さくらは流れる風景を見つめながら、心に強く思った。









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