桜の花びら舞う頃に
そして、次の日……




運命の、3連休の真ん中の日……





まぶしいばかりの朝日が、辺りを照らし出す。



「もう……朝か……」



カーテンの隙間から入り込む光に、ベッドの中の悠希は目を細める。


夕べは考え事をしていて、ほとんど眠ることが出来なかった。


考え事というのは、もちろん今日の返事のことである。


しかし、結局答えは出なかった。



皆が言うように、確かに香澄は綺麗で性格もいいと思う。



「そして、拓海とも仲が良いんだよな……」


悠希は、自分の右隣りのシーツをポンポンと優しくなでた。


いつもなら、ここには拓海が寝ている。

だが、その拓海は夕べから由梨の実家に泊まりに行っていた。


告白の返事をする場所に、拓海を連れて行かなくて済んだこと。

そのことに、悠希は胸をなでおろしていた。


「香澄さんとなら、きっと幸せになれるんだろうな……」


悠希はつぶやく。


昔の悠希なら、香澄の気持ちに素直に答えていたに違いない。





しかし……





さくらと出逢ってしまった今……


悠希の心は、激しく揺れ動くのだった。







「でも……さくらちゃんはお見合いするんだよ……」


悠希はつぶやく。

口にすることで、それは、より現実感を増して悠希にのしかかる。


「うあ~!」


悠希は、ベッドに大の字になった。




そうこうしているうちにも、時は流れて行く。

悠希は、時計に目を向けた。

現在の時刻は、午前7時。



「香澄さんとの待ち合わせは、あと3時間後か……」



その時、傍らに置いておいた携帯電話が、ロックバンドの歌を高らかに歌い着信を告げる。


「玲司?」


悠希は携帯電話を掴むと、受話ボタンを押して電話に出た。







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