桜の花びら舞う頃に
「……もしもし、こんな朝早くにどうした?」


悠希は尋ねる。


電話の向こうの玲司からは、いつもの



『はろ~!』



という挨拶のかわりに、怒りに満ちた声が返ってきた。


『どうしたじゃねーよ! 何やってんだ、お前は!』


突然の言葉に、いささかムッとする悠希。



「何やってんだって?」


『お前……今日が何の日かわかってんのか?』


「今日……?」



悠希は、再び時計に目を向けた。



「あと3時間経ったら、香澄さんに告白の返事をする日だ」


『……えっ!?』



電話の向こうの玲司から、動揺したような声が聞こえてくる。



『お、お前……さくらちゃんは……?』


「ああ……お見合いするって言ってた……」




『……玲司、ちょっと、かわって!』




突然、そういう声が聞こえたかと思うと……



『もしもし、悠希くん!』



今度は、電話の向こうから麻紀の声が聞こえてきた。






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