桜の花びら舞う頃に
『悠希くん……さくらのお見合い、今日なんだよ?』


「……え?」


『悠希くんはいいの? さくらがお見合いしても』


「いいも何も……俺は振られたってことでしょ……」


『違うっ!』



麻紀の必死な声に、悠希は思わず息をのむ。



『さくら……ずっと苦しんでた……』



ポツリポツリと、麻紀は話し出す。




涼介とのことを……




そして、『好き』という言葉の大切さを……




『さくらは……悠希くんが言ってくれるのをずっと待っていたんだよ?』


「…………」


『さくらにとって、“好き”という言葉は……とても大切な想いを乗せた言葉なの』


「麻紀ちゃん……」


『ねぇ……お願いだから、わかって!』





(だからあの時、あんなことを聞いてきたのか……)







ねぇ……

あたしのこと……

どう思ってる?





女性として、

どう思ってるか……

聞きたいの!







━━━大切な人。




あの時、そう答えた悠希を見つめた、悲しげな瞳。


そして、あの涙。





全てが、悠希の中でつながった。








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