桜の花びら舞う頃に
時計の針は、午前9時半。



「ちょっと、早く来すぎちゃったかな……」



約束の時刻30分前に緑地公園に到着した香澄は、つぶやきながらベンチに腰を下ろした。



今日も、緑地公園はたくさんの人で賑わっている。



「はぁ……」



香澄は両手を合わせると、祈るような格好でため息をついた。



「私……緊張してる?」



合わせたその手は、小刻みに震えている。


「私……月島くんが来てくれたら……泣いちゃうかもね……」


香澄は、そう言いながら苦笑いを浮かべた。



「は~あ……」



香澄は、もう一度、深くため息をついた。







その時━━━







賑やかな人々の合間をぬって



遊歩道の落ち葉を踏みしめながら



ゆっくりと近づいてくる足音が



香澄の耳に聞こえてきた。






「月島くん!」






香澄は振り返る。





その顔に、まぶしいばかりの笑みを浮かべて……












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