桜の花びら舞う頃に
「ごめんなさい!」



麻紀は頭を下げる。

玲司も、それに続いて頭を下げる。


緑地公園を、一陣の風が吹き抜けた。



「ううん……」



香澄は首を左右に振った。



「2人が来てくれたから……寒空の下で待ち続けなくてすんだしね……」



そう言って、香澄は微笑んだ。



「……それにね、正直ダメだと思ってたから」


「香澄さん……」



微笑むその顔には力がない。

香澄を見つめる2人は、胸を締め付けられたかのような苦しさを覚えた。



「私ね……」



香澄は2人を見つめ、静かに言葉を続ける。



「今度の人事異動で転勤するんだ……」


「えっ!?」


「だからその前に……って、私……あせりすぎたのかな?」



香澄は、


『ふふふ』


と、力なく笑った。


「香澄さん……」

「そうだったんだ……」


空を見上げる香澄。



飛行機が長い尾を引くように、空に軌跡を描いて飛んでいく。





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