桜の花びら舞う頃に
しかし……





「あ……」





不意に、その足は止まった。






(━━━やっぱり……ダメだ……)






「香澄さん?」

「どうしました?」


怪訝(けげん)そうな表情を浮かべて、玲司と麻紀は香澄を見る。



「2人に……1つ……お願いがあるの……」



香澄は、うつむきながら言う。



「ちょっと間でいいから……後ろ向いていてくれるかな……? 私……今から泣く……から……」




(香澄さん……)




2人は香澄に背を向けると、黙って空を見上げた。



空にかかっていた飛行機雲は、いつの間にか姿を消していた……











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