桜の花びら舞う頃に
料亭『白流湖』で綾瀬家と岡村家の見合いが始まり、すでに数時間が過ぎた。


最初はあまり気が進まない様子だった剛也も、今では岡村家とすっかり打ち解けている。


それもひとえに、見合い相手の由伸、そしてその両親の人徳のなせる業だろう。




(話も面白いし……お母さんが勧めるだけあるわ……)




そう思いながら、さくらはグラスに注がれた烏龍茶に手を伸ばす。

その瞬間、由伸と目が合った。

思わず顔が赤くなる。




(な……何であたし、赤くなってるのよ!)




心の中で自分に抗議するさくら。



「……さくらさん」



その時、由伸が話しかけてきた。



「ちょっと……庭を散歩しませんか?」



そう言って爽やかに笑う由伸に、再び赤くなるさくらだった。









< 465 / 550 >

この作品をシェア

pagetop