桜の花びら舞う頃に
うつむき、何かを考えるさくら。





しばしの沈黙の後……





「あの……」





さくらは、顔を上げた。





「いきなりで失礼かもしれませんが……由伸さんは、あたしのこと……どう思ってます?」





「さくらさんのこと……?」


手をアゴに当て、由伸は考える素振りを見せる。






そして……






「そうですね……素敵で……可愛らしくて……」


由伸は、さくらを真っ正面から見つめた。



「一言で言うなら……一目惚れ、ですね」


「一目惚れ……?」


「はい」



真っ直ぐに、そう答える由伸。



「あ……あたしは、ちょっとワガママだし……怒りっぽいし……すぐ泣くし……」



さくらは、思わず視線をそらす。



「そんな、一目惚れされるような人間じゃ……ないです」



自分で言っていて、少し悲しくなる。



「……だから!」



顔を上げるさくら。

しかし、由伸は静かに首を横に振った。



「自分を飾らず、はっきりと言ってくれたこと、とても嬉しいです」



そう言って、優しく微笑む。



「大丈夫、僕たちには時間はたっぷりあるんです」



そして、スッとさくらに手を差し伸べた。



「これからゆっくりと、お互いを知っていきましょう」





その微笑みは、まるで今の空のように爽やかで、とても大きく感じられた。










< 468 / 550 >

この作品をシェア

pagetop