桜の花びら舞う頃に
「……はあっ? お前が!?」
店内に悠希の声が響く。
他の客が、一斉に悠希たちのテーブルに注目する。
「バ、バカ、お前、声がデカいよ。他の人に何事かと思われるだろ」
あわてて悠希を制する玲司。
「あ……ごめん」
素直に謝る悠希。
まだ注目している人たちには、苦笑いをしながら軽く会釈をする。
「お前が恋の悩みなんて言うからだぞ!」
声のトーンを落とし、玲司に文句を言う。
「悪いかよ…… 俺だって、たまには真面目に恋愛するさ」
少し悪びれた表情を見せる玲司。
「たまにはって……毎回しろよ……」
悠希は視線をそらし、ため息をつく。
「とにかく、だ!」
少し口調を荒げ、悠希の視線を再び自分へと向ける玲司。
「今回は……俺に協力してくれ!」
「……協力?」
「ああ……」
悠希の興味を引けたところで、玲司も声のトーンを落とす。
「前に、得意先でいい子がいるって話をしたろ?」
「ああ、綺麗な子とか言ってたよな」
「そう、あれからずっと、その子に声をかけていたんだ」
「……お前、仕事しろよ」
悠希は苦笑する。