桜の花びら舞う頃に
タクシーは大きな公園の駐車場に入り、そこで停車した。

車内には、重苦しい空気が流れている。



「……ま、まぁ、兄ちゃん!」



大貫は、その空気を割って悠希に話しかける。


「仕方ない! よく、頑張ったよ!」


しかし、どんなに励まされても、失意の底からは抜け出せない。

言いようがない疲労感が襲ってくる。


「よ、よしっ、ワシが、コーヒーでも買って来ちゃるけ!」


そう言うと、大貫はタクシーから降りた。


「兄ちゃん……そんな暗い顔せんで……」


車内をのぞき込む大貫。


「なぁ、兄ちゃん……気晴らしに公園でも散歩してみたら……どうだい?」

「……散歩」


確かに、狭い車内にいるより、広い公園を歩いている方が気は晴れるかもしれない。

悠希が車から降りたことを確認すると、大貫は小走りでどこかに消えていった。








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