桜の花びら舞う頃に
1人になった悠希は、公園の中を歩き出した。


公園は、色鮮やかに葉を染めたモミジが美しい。

そのたくさんのモミジを見ていると、



遠くに来たんだ……



と、つくづく感じさせられた。






しばらく歩くと、公園の中心部に出た。


中心部は広場になっていて、大きな時計台と噴水がある。

噴水は、美しい放物線を描いて水を吹き上げ、見るものに癒しを与えていた。

そして、その噴水の周りに群がるように、たくさんの鳩が地面をつつきあっている。


悠希はそれをしり目に、ベンチに腰を下ろした。



「はぁ……」



ため息が自然と漏れる。



「結局、逢えなかったな……」



悠希はうつむいた。



「あの時、緑地公園で、さくらちゃんを抱きしめていたら……」



悠希の脳裏に、さくらが浮かぶ。

瞳いっぱいに涙を浮かべ、悲しげに微笑むさくらの姿が……



「俺は、さくらちゃんに救われた……」



悠希は、水を吹き上げる噴水を見つめた。



「なのに……」



しかし、不意にその視界がにじむ。



「俺は、さくらちゃんの期待に応えられなかった……」



瞳からは、涙が溢れている。

冷たい風が吹き抜けても、今の悠希にはそれを気にする余裕すらなかった。



「さくらちゃん……」



悠希は、つぶやく。










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