桜の花びら舞う頃に
「それじゃ悠希くん、またね」



さくらは名残惜しそうに手を振る。



「うん、また━━━」



悠希も手を振り返すが、ふとその手が止まった。



「……さくらちゃん、ちょっと待って」



そう言って、悠希もタクシーから降りる。



「……どうしたの?」


「うん……家の方に、一言、挨拶しておきたいと思って」


「挨拶?」


「結果的に、お見合いを壊しちゃったわけだし……」



悠希は頬をかく。



「それに、こういうことは、ちゃんと挨拶をしておきたいんだ」



そう言ってさくらを見つめる眼差しは、真剣そのものだ。


「ふふふっ……」


さくらは微笑む。



「さくら……ちゃん?」


「……あ、ごめんなさい。ちょっと、嬉しくて」


「嬉しい?」


「うん……ちゃんと考えてくれて……ありがとう」



微笑むさくらは、悠希の右手を両手で握った。



「行こっ! 2人とも、きっと歓迎してくれるはずよ!」



勢いよく走り出すさくら。

さくらに引っ張られるように、悠希も走り出した。


「頑張れよ~う!」


それを見つめる大貫の瞳は、またもや洪水のようだった……









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