桜の花びら舞う頃に
「で……おいくらくらい?」


再び財布を出す悠希。

財布の中には5万円ほど入っているが、もし足りなければ銀行のATMから引き出さなければならない。



「う~ん……」



大貫は目を閉じて、額に指を当てた。




そして……




「よしっ! 決めた!」



目を開き、手を叩く。



「ガソリン代だけ、もらおうかな!」


「えっ?」



今度は、悠希が驚く番だった。


「それだけ……?」

「不服かい?」


そう言って笑う大貫の顔は、晴れ渡る青空の太陽のようだった。



「兄ちゃん……色々と大変なこともあるだろうけど、しっかり頑張ってな!」


「ありがとうございます! 大貫さんも、奥さんと上手くいくことを祈ってます!」



2人は、ガッチリと固い握手を交わす。

そして、悠希は駅に向かって歩き出した。



大貫は、人混みに紛れて見えなくなるまで、ずっとその後ろ姿を見つめていた。










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