桜の花びら舞う頃に
『玲司、悪い! 新幹線来たから、また後で!』



そう言って、悠希からの電話は切れた。

玲司は、もう音を発さない携帯電話を見つめる。



「言えないよね……香澄さんの涙のことは」



キッチンから歩いてきた麻紀は、玲司の隣りに腰を下ろした。



「香澄さんと約束したもんな……」






『月島くんには秘密にしてね……』






「香澄さんの涙を無駄にしないためにも……」



玲司は、麻紀の肩を抱き寄せる。



「アイツらは、幸せにならなきゃいけないんだ……」


「うん……」



玲司に身体を預けた麻紀は、静かにうなずいた。











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