桜の花びら舞う頃に
そして、当日……





拓海の希望により、3人は臨海公園に遊びに来ていた。





「早く、早く行こー!」



少し離れた駐車場に車を停め、公園まで歩く3人。

待ちきれない様子の拓海に急かされて、普段よりも多少早足になる。





今日の拓海は、大きなリュックを背負っていた。

その中には、今日使うオモチャや、拓海の宝物が入っている。

これが、出かける時の拓海のスタイルなのだ。





公園に着いた拓海は、文字通り右へ左へと走り回る。




「パパ、あっち行こー!」



「さくら先生、次はこっちだよー!」




はしゃぎまくる拓海に、悠希とさくらも右へ左へと走らされた。



短期間で全ての遊具を制覇した拓海は、今は大きな砂場で遊んでいる。


「ふぅ……」


ようやく落ち着ける雰囲気に、悠希はため息をついてベンチに腰を下ろした。

さくらも、悠希の隣りに腰を下ろす。


「ごめんね、さくらちゃん。疲れたでしょ?」

「ううん、た~君がとっても嬉しそうで、来たかいがあったーって感じ」


さくらは微笑む。


「そう言ってもらえて助かるよ」


苦笑まじりに、悠希は砂場に目を移す。

砂場では、拓海がリュックから取り出したスコップで、大きなトンネルを作っていた。


さくらも、悠希にならって砂場に目を向ける。



「ねぇ、悠希くん……」



そして、拓海を見つめて、優しくその目を細めた。



「知らない人が見たら……あたしたちって家族に見えるのかな?」



そう言って笑うさくらの姿に、悠希の胸は激しく高鳴る。



「ああ……きっと見えるよ」



その答えに、さくらは更に目を細めて微笑んだ。




潮風が、優しく頬をなでる。

さくらは髪を押さえて立ち上がると、砂場の中に入った。


そして、膝を抱えるようにしゃがみ込むと、砂を一握りする。


砂浜の砂を使用した砂は目が細かい。

握った手を緩めると、指の隙間からサラサラと砂がこぼれ落ちていった。








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