桜の花びら舞う頃に
少し離れたところから、一部始終を見ていたさくらは、ゆっくりと悠希の元に歩み寄った。



「ごめん……」



さくらの顔を直視することが出来ない悠希。



「ううん……」



さくらは、首を振る。



「仕方ないよ……あたしとの時間より、由梨さんとの時間の方が長いんだし……」




た~なら大丈夫!




その根拠のない自信は、どこから来たのだろう?





た~の胸には

今でも由梨がいて……



なのに、俺は……



無神経に、た~の気持ちを傷付けた……



俺は、さくらちゃんと出逢い

前に進めた……



今のた~は

昔の俺と同じ……



少しずつ

少しずつ



その胸の氷を

溶かしてあげなきゃ

いけなかったんだ……



俺は……







そのとき……

悠希の手に、温かい感触が生まれた。






それは……





「さくら……ちゃん?」



さくらは、悠希の手を強く握りしめる。



「悠希くん、1人で背負い込まないで……」


ゆっくりと、顔を上げる悠希。

視線が重なると、さくらは優しく微笑んだ。



「ちょっとずつ、ちょっとずつ、時間をかけていこう……ね?」




(そうだ……俺は、もう1人じゃない……)




そう思うだけで、胸が軽くなる気がした。



「ありがとう……」






つないだ手が

とても優しくて……



その想いが

とても温かくて……



改めて、さくらを好きになって良かった……と、心からそう思うのだった。









< 504 / 550 >

この作品をシェア

pagetop