桜の花びら舞う頃に
しばらく、その心地の良さに浸っていた悠希だったが、不意に拓海のことが頭をよぎった。



「……た~は、どこまで行ったんだろう?」



そのことが気にかかり、悠希は拓海が走っていった方向に目をこらした。



「……悠希くん、行ってみよう!」



さくらは手をつないだまま、拓海が走っていった方向に走り出そうとした━━━






━━━そのとき。






「あらっ? 綾瀬先生じゃない!」





背後から不意に、年配の女性の声が響いた。



「こ、この声は……!」



さくらは、あわてて手を離し振り返る。

一緒に振り向いた悠希も、思わず息を飲んだ。



「こ、こんにちは、校長先生……」



潮の香りのする風が、2人の間をすり抜けていった。










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